正社員と契約社員の不合理な労働条件(賃金・手当)は労働契約法違反_長澤運輸事件とハマキョウレックス事件

image11こんにちは! 鈴木正章行政書士事務所の鈴木正章です。

今日は、労働契約法20条を考えます。

労働契約法第20条
「有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が
期間の定めのあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を
締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合に
おいては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に
伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という)、当該
職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と
認められるものであってはならない。」

これに関連した判決が、2つあります。一つは、長澤運輸事件(東京
地裁判決 平成28年5月13日)、もう一つは、ハマキョウレックス事件
(大阪高裁平成28年7月26日)です。

(1)長澤運輸事件
定年退職後、嘱託(有期契約社員)として再雇用された社員が、職務
の内容が定年前と同じであるにも関わらず、3割程度低い賃金とされた
ことについて、労働契約法20条に違反し無効であると主張して争われた
裁判で、東京地裁は、原告(労働者)の主張を全面的に認め、会社側に
対して約420万円の支払いを命じたものです。

本判決は、控訴されており、予断はできませんが、もしこの判決と同じ
内容で判決が確定してしまったら、社会的影響は計り知れません。
通常、企業では、定年後再雇用者の賃金は、定年時の賃金の3割程度
低くしているはずですから。

高年齢者雇用安定法により、企業は、希望する労働者を65歳まで
雇用する義務を負っています。従って、この判決は企業の経営にかなり
の影響を与えます。

対策としては、「定年後再雇用者には、正社員の就業規則は適用されない」
ことを就業規則に明確に謳っておくこと等が必要になると考えます。

(2)ハマキョウレックス事件
同じ業務内容なのに、正社員と契約社員とで賃金や手当が異なるのは
労働契約法に違反するとして争われた裁判で、大阪高裁は、手当の一部を
違法として、会社側に対して差額77万円の支払いを命じました。
具体的には、「無事故手当」「作業手当」「給食手当」「通勤手当」に
ついて、相当額の賠償金の支払いを命じました。

企業経営者にとっては、正社員と契約社員との労働条件の相違について
相当慎重な判断が求められると思われます。

 

なお、弊事務所のHPは、以下の通り

http://www.suzukimasaaki-gyouseishoshi-jimusho.com/